●買収電機について

 買収された14社の電気鉄道のうち、電気機関車を保有しなかったのは、市内線的性格の強い広浜と、貨物輸送は蒸機に頼った鶴見臨港および宇部鉄道(旧宇部電気鉄道は所有)だけで、他は多かれ少なかれ電気機関車を所有していた。これ以外に、未開業のまま買収された奥多摩電気鉄道が発注した電機と、ナローの両備鉄道の車両を加えたものが買収電機である。一部が2軸機であったほかは全て4軸機であった。

 これらのうち、信濃と富士身延及び両備出身機は国鉄制式番号を付番されたが、他の戦時買収線の電機は戦時買収国電同様の私鉄時代の番号のまま国鉄籍に編入され、戦後早々に廃車になったものもある。そして、1952年に漸く戦時買収線の電機にも制式番号が、当時の最終形式であるED24に追加される形でED25〜ED38を買収・製造順に与えられた。が、その付番方法は1953年の国電改番ほど厳密なものではなく、宮城出身機は私鉄時代の番号が国鉄式に近いと言う理由で、1952年以降もそのままED27およびED35を継続使用した。これは富士身延の機関車に関しても同じで、同社の201〜204、210〜212はそのままEDを冠してED20 1〜4,ED21 1〜3になって、逆に買収の早い信濃車がED22を割り振られている。

 その後は買収国電と同じく私鉄に譲渡されるものが相次いだ。また交直流機・交流機が登場してくると、10〜99までの90形式しか設定できない機関車にとって、1形式1両の買収機は目障りな存在になってきた。そこで1961年にED21以外の残存形式は再度改番を行ない、ED25 10〜ED29 10の5形式に整理した。この頃になると、買収機でありながら国鉄機と同様に扱われるようになる。買収国電よりも国鉄車としては若干長らえ、1970年代前半まで使用された車輛も存在する。

 私鉄に払い下げられたものは、貨物輸送の廃止により1970年代には廃車になるものが続出したが、工事・事業用として残ったものも多く、また輸入車など貴重な車両ということで保存された車輛もある。買収国電に比べラッキーな車両が多いといえよう。

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