●幻の買収国電

 さて、買収に失敗したり中止した路線も多い。ここではそんな路線を取り上げる。

 鉄道敷設法の予定線「豊橋ヨリ伊良湖岬ニ至ル鉄道」は、陸軍の伊良湖試砲場への物資輸送も絡んで建設されることになった。このため、この予定線の一部を走る名古屋鉄道渥美線(豊橋〜黒田原)を買収することになった。 この名鉄渥美線はもともと渥美電鉄として1924年に部分開業した路線である。当初苦戦を強いられたが、バスを傘下に納め半島内の交通を手中にしていた。
 1938年8月20日に三河地方の交通を統合してきた名古屋鉄道に合併するが、当線はその年度に買収されるはずだったので、独立会計を行なっていた。国鉄側も1938年度に買収予算を付けている。しかし、何故か買収されず、また国鉄が建設した黒田原以遠も戦局の悪化により、福江までの路盤が完成した時点で放置された。

 さてこの名鉄渥美線とは、既に想像の付いた方もおられると思うが、現在の豊橋鉄道渥美線のことである。但し1944年に三河田原〜黒田原を廃止している。なお当時、木造単車3輌(モ1〜3)、2軸客車3輌(サハ31〜33)を所有していた。もし買収されていたら、国鉄久々の2軸単車になったはずである。


もしかしたら買収国電になっていた?
豊橋鉄道デワ11(←デワ33←名鉄モ1←渥美電鉄モハ100)

1996年8月29日 高師

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