第10輯.湿原に消えた軌道  簡易軌道雪裡線・幌呂線=鶴居村営軌道(北海道)

 1960年代までの北海道には、国鉄・私鉄・公営交通以外にもう1種類の営業用軌道がありました。それが簡易軌道と呼ばれる軌道群で、未だ道路が未整備だった北海道(特に釧根台地)に入植した人の足として国(内務省)により「道路の変形」として建設されました。
 馬力軌道がその多くをしめましたが、一部路線は戦後に軌間762mmの内燃動力路線に近代化を実施し、1960年代後半まで生き延びました。その車両たちは内地メーカー製で、一般の軽便鉄道と一味も二味も異なる特色のある車両ばかりでした。
 今回は、その一つ、釧路の一つ東側である新富士から釧路湿原を抜けて、中雪裡および上幌呂を結んでいた雪裡線・幌呂線、いわゆる鶴居村営軌道の保存車訪問を記したいと思います。

 なお、一般的に○○村営(町営)軌道と呼ばれることが多い簡易軌道ですが、その所有は国(農林省)の管轄で北海道が管理代行、実際の運営は地元町村が行うという、大変複雑な関係になっていました。


(1)鶴居村郷土資料館の泰和製DLとDC
 現在は、釧路駅前から阿寒バスに乗ると、1時間強で鶴居村の中心地につくことができます。バス停名は「鶴居市街」(といっても全く市街ではない、北海道の集落)とありますが、ここがかつての簡易軌道の終点、中雪裡に当ります。
 ここに鶴居村郷土資料館があり、その前庭に、かつて簡易軌道で活躍した車両が保存されています。
1960年泰和車両製の6tDLと、同じく泰和車両製で製造された自走客車(※ 簡易軌道の車両は特に車番等を持たなかった)です。自走客車の方は末期に製造された部類で、トルコン付きの両運転台車になっています。
 なお、資料館にも、簡易軌道に関する資料があり、有名なボンネットバス改造車の写真も展示されています。



1997-8-23 撮影 DCの方は色が飛んでしまったが、水色に白色の帯の塗装である。

(2)鶴居中学校の釧路製有蓋貨車
 鶴居軌道の車両は、上記の車両が有名ですが、その近くの中学校で、ひっそりと利用されているのがこの有蓋貨車です。現役当時の色はわかりませんが、真っ白に塗られて校庭の片隅に倉庫として置かれています。
1961年釧路製作所製。

1997-8-23 撮影。

(3)丸瀬布いこいの森の運輸製DL
 1959年に運輸工業で製造された6tDLは、路線廃止後、釧路駅北東にある新宮商工(株)の木材防腐工場で、木材の移動用として利用されていましたが、酷使の末、1990年代に入り使用停止・放置されていました。
 その後、1995年に雨宮製作所製蒸気機関車21号機の動態保存で知られる紋別郡丸瀬布町が同機の予備機として購入、札幌交通機械で大規模な修復を行った上で搬入され、いこいの森で動態保存されています。

左:1995-9-2 新宮商工にて。妻面で木材を押していたため、ボロボロ。
      後に、この数日後に札幌交通機械に搬入されたと聞いた。
右:2002-6 丸瀬布町「いこいの森」にて。車体の修復は大掛かりなものになり、原型と異なる部分もあるが
      この車両が「動く」ということだけでも、感謝しなければなるまい。

▲ 面影紀行 総合へ

inserted by FC2 system