ストックホルムとその交通網について

ストックホルム(Stockholm)について


・上空から見たストックホルム 画面手前がメーラレン湖・奥がバルト海 中央にあるのが観光名所のガムラスタン(旧市街)

 北欧、スカンジナビア半島に所在するスウェーデン王国の首都。北緯59度20分 東経18度3分で国土の中央より南側に位置する。
メーラレン湖(Mälaren)とバルト海の間に位置し大小さまざまな島から成り立っている。そもそもストックホルムとは「丸太(ストック)の島(ホルム)」を意味する。 ストックホルム市そのものの人口は75万人・209平方kmであるが、周辺の市を含む市街地人口は約158万人・381平方km、また同市と周辺の25市が属するストックホルム県全体では229万人・6519平方kmとなる(人口は2017年のデータ)。

ストックホルム県の交通網について

 ストックホルム県内の交通機関には以下のものが存在する。
運営は水上バスを除き、全てストックホルム地方交通(SL:AB Storstockholms Lokaltrafik)が担っている。
ただし、運行等の実務は専門業者が行っている。

・ストックホルム中心部の軌道系地域交通 (データはOpenStreetMapを利用) SLの公式路線図はこちら

1.地下鉄(Tunnelbana)

 ストックホルム中心部の主力交通機関。Tunnelbanaは「トンネル軌道」の意。
地下鉄中央駅(T-centralen)を中心とする路線網で赤線(Röda linjen 13~14系統)・青線(Blå linjen 10~11系統)・緑(Gröna linjen 17~19系統)の3路線に7系統を運行する。総延長は約110km。実務は香港MTR系列のMTR Nordicが担当している。
 軌間1435mm・第3軌条集電式は各線共通であるが、赤・緑線が電圧650Vなのに対し、青線は750Vとなっている。ただし現在の車両は共通である。
赤線と緑線は郊外に出ると地上を走る。他に、都心部でもガムラスタン(GamlaStan=旧市街)附近は地上である。

2.ヘビーレールの通勤電車(Pendeltåg)

 4方向に7系統を運行する。40番台の系統番号が割り振られている。
Pendeltågとは「振り子(のように行き来する)列車」を意味する。ドイツ語のPendelzug(ペンデルツーク)と同じであるが、機関車と客車のプッシュプルトレインではなく、通常の電車が使われている。実務は地下鉄と同じくMTR Nordicが担当している。
 スウェーデンのヘビーレールは軌間1435mm、電化区間は交流16.7Hz 15000Vで、通勤電車もこの規格である。なお、ストックホルム都心部では、2017年に開業したストックホルム市駅(Stockholm City、地下鉄中央駅に直結)を通る地下別線になっており、ストックホルム中央駅(Stockholms centralstation)は通らない。複々線区間は方向別で内側が電車線となっている。
 列車は基本的に郊外からストックホルム市駅を通り、そのまま別の郊外へと向かう形態となっている。余談であるが、列車線のストックホルム中央駅も通過構造となっている。なお、ストックホルム県外への近郊電車は、スウェーデン鉄道(SJ=旧・国鉄)が運行しており、ストックホルム中央駅が起点で複々線区間では列車線を走行する。運賃もSLとは別建てである。

3.郊外電車(Lokalbana)

 市街地南部のスルッセン(Sulussen)を起点とするサルトシェー線(Saltsjöbanan 25~26系統)と市街地東北部のストックホルム東駅(Sotckholms östra)を起点とするロースラーゲン線(Roslagsbanan 27~29系統)の2路線が存在する。実務は、英国に本拠地を置くArriva(DB=ドイツ鉄道系列)が担当している。
 現地での英語案内は「Light Rail」となっているが、高床で架線集電式の電車が専用軌道を走る日本の私鉄のような路線である(欧州ではライトレールはヘビーレールより軽量・小型の車両が高速走行するものであり、現在日本で定着しているライトレール像とは異なる)。ただし、2路線は全く異なっており、サルトシェー線は軌間1435mm・電圧750V 全長18.6kmなのに対し、ロースラーゲン線は軌間891mm・電圧1500Vで全長65.1kmである。

4.路面電車(Spårvagn)

 4路線が存在する。うち2路線の線路が繋がっているものの、地理的・機能的には全路線孤立している。全路線、軌間1435mm・電圧750Vで、車両は保存車を除き部分低床車が用いられている。
 ノッケビー線(Nockebybanan 12系統)とリディンゲ線(Lidingöbanan 21系統)は1967年に原則として全路線が廃止になったストックホルムの路面電車の中で、例外的に存続した路線。どちらも全区間専用軌道であるので、東急世田谷線のようなものだと想像していただきたい。
 横断線(Tvärbanan 22系統)は2000年から順次開業したもので、郊外同士を結ぶ外環状線的路線である。各所で地下鉄など他の軌道系交通機関と接続している。併用軌道・センターリザベーション・専用軌道が入り乱れる線形である一方、3車体連節車が常に重連で走る形態は、日本人が思う「ライトレール」に近い。
 市街電車(Spårväg City 7系統)は、1991年に運行を開始した動態保存用路線(現在の7N系統)を、2010年に中央駅附近まで延伸し都市交通に昇格したもの。最も路面電車らしい路線である。
 実務は、12系統と22系統がArriva、21系統と7系統がStockholms Spårvägarである。

5.路線バス

 ストックホルム県内をくまなく走る。
バイオディーゼルなど非化石燃料の使用に注力しているのが特徴。
地域ごとに実務業者が異なっており、Arrivaの他、フランスに本拠地を置くKeolis(SNCF=仏国鉄系列)や、元スウェーデン国鉄バスのNobinaなどが担当している。

6.水上バス

島の多い街らしく、水上バスも4航路が存在する。
Waxholms Ångfartygs社が運行するが、運賃はSLと共通制となっている。

運賃は均一制で、75分以内であればSLのどの交通機関でればどれでも自由に乗り降りすることが可能。
ただし1乗車は45クローナ(約500円)と高額。ICカードを使うと32クローナ(約360円)となる。
24時間券は130クローナ(約1450円)、72時間券は260クローナ(約2900円)なので、滞在中毎日乗るような場合は、こちらのほうが得。なお、通勤電車のアーランダ空港線を使う場合は加算運賃がとられて、152クローナ(約1700円)となり、24時間券・72時間券の有効範囲外となるので注意(滞在時のレート 1クローナ=約11円で計算)。

(解説内容は特に断りがあるものを除き2019年10月現在のものである)

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