主要機器類


ここでは600・700・800形の機器類について述べる。
名古屋市交通局東山線・名城線とコトデンでは電車線電圧が異なるため、名古屋市交の機器を継承していないものも多い。

・台車と車輪
 日車、日立、住友の3メーカーで製作された複数の種類がある。いずれも200形以降、1000・1500形以外で採用された名古屋市交の標準設計品である。車輪径763mm、軸距1800mmで、一般的な鉄道線の平行カルダン駆動用の台車(※1)に比べ小ぶりである。軸ばねはウィングばね式、枕ばねはコイルバネで揺れ枕式である。また、防振・騒音の低減を目的にタイヤと輪心の間にゴムを挟んだ弾性車輪を採用している。かつては名古屋市交東山線・名城線電車の特徴であった。基礎ブレーキはディスクブレーキである。
 コトデンには以下の4種類が入った。サフィックスによる差は判明しているものだけを記す。なお、コトデンへの譲渡時もしくは譲渡後に台車を振り替えているものがあり、種車が履いていたものと一致するとは限らない。

日立KH-46系

200・600で採用され1975年製の最終増備車まで採用された。1969・71年製の東山線向けはA、1971年製の名城線向けはB、1973年以降はCのサフィックスがつく。軸箱上の台車枠下部が弧を描いているのが特徴。コトデンではKH-46A、KH-46CS(※2)を使用する。
画像は604(2011年8月)。

日車ND-110系

200・600で採用され1969年製の東山線車両まで採用された。1969年製はND-110Aとサフィックスが付く。
ボルスタアンカー付きなのが特徴。コトデンではND-110Aのみを使用する。
画像は602(2011年8月)。

日車ND-111系

1971年以降に製造された車両で採用された。1971年製の名城線向けはA、1973年以降はSのサフィックスがつく。
ボルスタアンカーが廃止され住友製の台車に近い形状になったが、台車枠下部が段付きになっているのが特徴である。コトデンではND-111Sのみを使用する。
画像は606(2008年11月)。

住友FS-354系

日車と日立が市営地下鉄開業期から採用されたのに対し、住友製は1000形で初採用となった。
この型式は1969年製の車両から採用された。1971年製の名城線向けはA、1973年以降はASのサフィックスがつく。Aでは車軸直径の変更、軸受けの構造を変更、車輪の構造の変更(米国のPCC車方式からスウェーデンSAB社方式へ)が行われた。ASでは軸受け構造をサフィックス無しと同等に戻す一方、新JISネジを採用した。ND-111とKH-46のサフィックスも同じ理由ではないかと推測する。FS-354はサフィックスを含めて、台車枠に型式がプレスされているので、解りやすい。コトデンでは全種類を使用している。
画像は723のFS-354(左上)、605のFS-354A(右上)、614のFS-353AS(左下 いずれも2022年11月)。

なお、もとは第三軌条集電式の車両用であるため集電靴(コレクターシュー)が台座を介して取り付けられていた。これらは外されているが、取付座だけは残っている。

 
・FS-354の全景。台車枠の片端が枕木方向に折れてディスクブレーキのキャリパを取り付ける構造になっている。(画像はキャリパを外した状態)

・(左) 弾性車輪と駆動装置のカットモデル
・(右) SAB式弾性車輪の内部。黒いものがゴムブロックでこれを8個並べた上で、下に敷いてある当板でタイヤ側と輪心側の間に
   ボルトで固定する。なおPCC車式はゴムブロックの代わりに1枚のゴム板を挟む。
   2006年10月 名古屋市交通局藤が丘工場


※1:たとえば琴平線1080・1100が履いている東急TS-310は車輪径860mm・軸距2100mmである。
※2:参考文献5などではこの型式が記述されている。種車の製造年月を考えるとKH-46Cと同じものを指すと思われる。

・主制御器と主電動機


 主制御器は日立MMC-LTB-10系で、一般的な電動カム軸式である。メーカの基準で、Lは電車線電源が低電圧、Tは弱界磁、Bは電制を表す。力行が直列1+11段、並列8段、弱界磁4段、制動が1+17段である。
 東山線200・600形の一部で初採用されたもので、名城線1000形以降の鋼製車は全てこのシリーズを搭載する。東山線100形グループ(200・600・700形)がMMC-LTB-10A、名城線各車がMMC-LTB-10B、東山線300形グループがMMC-LTB-10Cとサフィックスが異なり正式には更にそのあとに数字がつく。
 コトデンに入線した車両に取り付けられたものは、外形上は2種類ある。一番右側の幅の狭い部分も他と同じ蓋のタイプ(画像上 623)は1998年度に入線した601、621、623、701の4両に取り付けられている。他の車両は、一番右側の蓋だけ一段凹んでいるタイプ(画像下 613)である。名古屋市交の画像を見比べると、前者がMMC-LTB-10AもしくはMMC-LTB-10C、後者がMMC-LTB-10Bと考えられる。その場合、607、609、629は譲渡時に変更したことになる。MMC-LTB-10Aであれば譲渡時に制御電圧を100Vに変更していると推測され、そのあたりが絡んでいるのかもしれない。なお画像下のタイプは一番右側が主電動機開放スイッチ(MCOS)と逆転器(RV)の2種類あるが、その理由は不明である。

 主電動機は名古屋市交では三菱MB-3092、日立HS-830、日車NE-55を採用していた。いずれも直流直巻電動機で、端子電圧300V・定格出力55kWである。コトデンでは電車線電圧1500V・4個永久直列で使用するため、端子にかかる電圧は375Vと1.25倍になり、出力は68kWとしている。

三菱MB-3092は200形で採用され以降の鋼製車の標準となった。200・600形向けは出力が50kWでサフッィクスにCが、それ以外はEがつく。
日立HS-830は1000形で採用され、こちらも以後各形式で使われた。Brb、Drb〜Krbのサフィックスがつく。なお700形1次車に搭載されたHS-830-Drbは出力が50kWである。
日車NE-55は1969・1971年製の一部の車両で採用された。A〜Cのサフィックスがつく。

参考文献9の記述では三菱MB-3092(MB-3092E)と日立HS-830(HS-830-Grb、HS-830Krb)がコトデンへの譲渡車に装備されていることは確実だが、NE-55については判らない。

・参考 名古屋市交通局鋼製車の台車と主電動機(100・500を除く)
 (参考文献3より作成)
製造年型式台車主電動機
日立日車住友(※1)日立日車三菱(※2)
コイルバネ空気バネコイルバネ空気バネ
1964200・600KH-46ND-110MB-3092C
19651000ND-305FS-362HS-830-BrbMB-3092E
700KH-46ND-110HS-830-Drb
1966700KH-46ND-110HS-830-Erb
19671000・1500ND-305FS-362HS-830-FrbMB-3092E
300・800KH-46ND-110
ND-110A
HS-830-Frb
1969300・800KH-46
KH-46A
ND-110
ND-110A
FS-354HS-830-GrbNE-55AMB-3092E
700KH-46AHS-830-Hrb
19711100・1600KH-46BND-111AFS-354AHS-830-Grb
HS-830-Irb
NE-55BMB-3092E
1971700KH-46AND-111FS-354AHS-830-JrbNE-55CMB-3092E
1973800KH-46CND-111SFS-354ASHS-830-krbMB-3092E
700KH-46CND-111SFS-353ASHS-830-krbMB-3092E
19731200・1700
1800・1900
KH-46CND-111SFS-354ASHS-830-krbMB-3092E
19741600FS-354A
FS-354AS
MB-3092E
1975300・800KH-46CND-110
ND-111S
FS-354ASHS-830-krbMB-3092E
※1:参考文献では型式がFS-354Pcc、FS-354SABとなっているものがある。
  これらは車輪の差に由来したものと判断し、FS-354およびFS-354Aとした。
※2:さらにサフィックスがつくが省略した。

・パンタグラフ
入線時に取り付けていたものは京王帝都電鉄6000系の廃車発生品である東洋電機PT42系(PT-4201S)である。
集電舟が2つに完全に別れており、主ばねは水平に取り付けられている。
また避雷器は円筒形のものが左側面に設置されている。

・左は623、右は601。いずれも2004年4月撮影


一方、2004年頃から順次換装されたものは、集電舟のホーンが2枚で1つになっており、主ばねは垂直方向に斜めに取り付けられている。
また、避雷器は左側面に枕木方向に取り付けられている。
これらの特徴から、もとは京浜急行電鉄で使用されていた東洋電機PT43系(PT43-E)ではないかと思われる。
なお、同じ時期に京王帝都電鉄から譲渡された1100形のパンタグラフもPT-4201からこのタイプに変更されている。

・左は605、2008年11月撮影。右は629、2022年11月撮影。


・冷房機
 冷房能力の関係で2種類を混載しているのが特徴である。
車体中央の1機は東芝RPU-2203で冷房能力8000kcal/h、京王帝都電鉄6000系等の廃車発生品である。屋根に台座を設けて取り付けられている。
 一方車両の両端に搭載されている2機はいずれも冷房能力10500Kcalであるが2種類ある。初期の車両に搭載されているのは三菱CU-193で、小田急電鉄3100系(NSE車)の廃車発生品である。これは従来床下冷房のみだった同車の冷房増強のために屋上に追加されたものである。NSEもこのときに屋上に冷房用風洞を設けており、それを跨ぐカバー形状となっている。同様の屋根の構造になったコトデン600・700には好都合だったのかもしれない。後期の車両は三菱CU-191Pで泉北高速鉄道100系の廃車発生品である。こちらは通常のカバー形状であるためRPU-2203同様に台座を設けている。
 
・(左) 東芝RPU-2203
・(右下) 三菱CU-193
・(右下) 三菱CU-191P


 台座の形状は複数ある。各車両の旧番号・仕様等一覧を参照されたい。


・その他の機器類
補助電源はSIV(静止型インバータ)で、廃車発生品からの流用が多い中で、数少ない新品である。
主抵抗器も新品である。
コンプレッサはC-1000に交換された。各社で標準的に使われているのもので、これらも廃車発生品である。


バッテリーは、京王6000廃車発生品である。
連結器は小型密着自動連結器(簡易密着連結器)のNCB-IIである。一部に?上毛電鉄300系の廃車発生品が使われているようである。(参考文献等15)


・履歴
2023.5.2 「主制御器と主電動機」主制御器の画像を追加し、解説を変更。
      「その他の機器類」主抵抗器を追加。
2023.2.25 パンタ台についての記述を屋上機器ほかに移動。
2023.2.16 「パンタグラフ」に入線後の変更を反映
2023.2.5 作製

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