神奈川電鉄をたずねて
◆津久井総線(津久井・八王子・半原線) 路線案内
津久井線 橋本〜三ヶ木 12.3Km | |||||||
駅 名 | 区間 粁程 |
累計 粁程 |
標高 | 平均 勾配 |
備考 | ●最急曲線 140m(西中野〜三ヶ木ほか) ●最急勾配 30‰(九沢〜大島信号所) ●隧道 又野隧道(西中野〜三ヶ木) ●主な橋梁 津久井湖橋梁(津久井湖〜太井) |
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橋本 | はしもと | - | 0.0 | 140 | |||
九沢 | くざわ | 2.0 | 2.0 | 130 | |||
大沢 | おおざわ | 0.8 | 2.8 | 120 | 信号所 | ||
大島 | おおしま | 0.6 | 3.4 | 135 | |||
城山 | しろやま | 1.6 | 5.0 | 145 | 旧称 川尻/城山車庫・城山変電所 | ||
津久井湖 | つくいこ | 1.1 | 6.1 | 145 | |||
太井 | おおい | 1.9 | 8.0 | 150 | 上 4.1 | ||
津久井中野 | つくいなかの | 1.5 | 9.5 | 166 | 上10.7 | ||
西中野 | にしなかの | 0.8 | 10.3 | 170 | |||
三ヶ木 | みかげ | 2.0 | 12.3 | 200 | |||
八王子線 八王子〜城山 9.1km | |||||||
八王子 | はちおうじ | - | 0.0 | 110 | ●最急曲線 160m(八王子〜富士森公園) ●最急勾配 27‰(下寺田〜多摩大船) ●隧道 七国峠隧道(多摩大船〜真米) ●主な橋梁 湯殿川橋梁(小比企〜下寺田) | ||
富士森公園 | ふじもりこうえん | 1.4 | 1.4 | 135 | 上17.8 | 旧称 南八王子 | |
小比企 | こひき | 1.4 | 2.8 | 150 | 上13.6 | ||
下寺田 | しもてらだ | 1.3 | 4.1 | 130 | 下12.5 | 寺田変電所 | |
多摩大船 | たまおおふね | 1.1 | 5.2 | 150 | 上18.2 | ||
真米 | まこめ | 1.7 | 6.9 | 150 | L | ||
津久井原宿 | つくいはらじゅく | 1.1 | 8.0 | 155 | 下 5.5 | ||
城山 | しろやま | 1.3 | 9.3 | 145 | 下 8.3 | ||
半原線 津久井中野〜半原 8.0km | |||||||
津久井中野 | つくいなかの | - | 0.0 | 166 |
●最急曲線 110m(韮尾根〜半原) ●最急勾配 40‰(韮尾根〜半原) ●隧道 根小屋隧道(津久井中野〜根小屋) 真名倉隧道(韮尾根〜半原) ●主な橋梁 尻久保沢橋梁(津久井中野〜根小屋) 串川橋梁(串川〜韮尾根) 韮尾根沢第1橋梁(串川〜韮尾根) 中津川第3橋梁(韮尾根〜半原) |
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根小屋 | ねこや | 1.7 | 1.7 | ||||
長竹 | ながたけ | 1.9 | 3.6 | 長竹変電所 | |||
韮尾根 | にろおね | 1.4 | 5.0 | 210 | 上28.5 | ||
半原 | はんばら | 3.0 | 8.0 | 125 | 下31.6 | 愛甲線と共用 | |
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神奈川電鉄が走る町と駅(津久井総線篇) ・八王子線 織物の町として知られる八王子は、1940年までは東京多摩地方唯一の市であった。その割に郊外路線ができなかったのは、周囲が山に囲まれていることに関係するだろう。 八王子線が発着する、中武電鉄の八王子駅はJR駅と同位置だが、JRより駅本屋側に私鉄の発着線が、しかも貫通して存在する珍しい形態である。これは戦災後の都市計画で、もともと駅前広場の北東側にあった中武の駅を、現在地にずらしたことで発生したものである。その時、中武は高尾方面への延長を考えていたが、京王関連各社に阻止されたらしい。その打開策として神奈川電鉄との乗り入れを画策したという話も伝わっている。 一方、もとの神奈川電鉄八王子駅は、やや北側に独自のターミナルがあったが、中武電鉄乗り入れ時に現在地に移転した。もともと貨物用の側線が八王子駅構内に乗り入れており、これを利用しての変更だった。 さて、通常、神奈川電鉄の列車は行き止まり式の専用ホーム(5.6番線)に発着するが、中部直通電車は中武側の2(3)、4番線に発着する。 各ホームからの線路が集まると、やや北に路線を振りながら勾配を登り、南にカーブして中央線をオーバークロスする。そのまま暫く築堤を進むと富士森公園である。さらに勾配を登り京王高尾線をオーバークロスするが、ここには駅がなく坂を下りきった湯殿川沿いに小比企がある。京王線の山田駅までは徒歩10分ほどだがきつい登り坂を歩かなくてはならない。 下寺田を過ぎると南に進路を変えて多摩大船となる。今でこそ住宅が並び、山を切り開いてニュータウンの造成も計画されているが、戦前は人口が少ないところだった。が、それでも当線が敷設されたのは、前身の南津電気鉄道の大株主であった相模川水電の八王子への売電ルートだったからであろう。今でも架線柱は送電線併設である。 全長480mの七国峠隧道を抜けると東京家政学院大学に程近い真米である。そして、山間を抜け視界が開けると昔は相模と武蔵の境、今は東京都と神奈川県境の境川を渡る。津久井原宿駅周辺も、かつては桑畑が広がるだけの何もない処だったが、相模原の工業開発の余波で、住宅地化が進んだ。 国道413号線を越えると、下り勾配になる。相模川の段丘を一段降りる為である。やがて、左下に城山車庫が現れるが直ぐに同レベルになり、車庫線・橋本方面の路線と合流すると、2面3線の城山である。駅舎は、スーパーと同居している。駅の所在する久保沢は、城山町役場があり町の中心である。なお、1967年までは旧村名の川尻と称していた。 ・津久井線 現在でこそ、橋本は相模原市北部の要衝であるが、横浜線開業時に駅はなく、地元の熱烈な請願により建設されたものである。その橋本駅は神奈川電鉄で唯一のJRとの共用駅で、相模線の更に東側に1面2線の設備がある。ただしJRのホームと平行ではなく、斜めになっている。 駅を出ると国道16号線をアンダーパスし、中小工場が並ぶなかをすすんで行く。九沢を過ぎると段丘を下り、神奈川電鉄唯一の信号所である大沢信号所、そして大島と進む。九沢・大島とも駅前には団地があるが、駅間には農地も多く残っている。また、ポールが北側にあることから、格好の電車撮影地になっている。やがて右手に城山車庫が現われ、その入出庫線ならびに八王子線と合流し城山になる。 城山を出ると、久保沢の集落を一跨ぎして谷ヶ原浄水場の脇を行く。 この辺りから太井付近までは城山ダム(津久井湖)建設に伴い、路線が大きく変更された箇所である。 旧路線は、浄水場を抜けたあたりで40‰の勾配で相模川沿いに下り、都井沢隧道を抜けたところで水道軌道に合流・津久井水道橋で対岸に渡り、今度は急カーブ再び40‰の上り急勾配で太井に達していた。 現在の路線は、先ずダム建設の資材線として建設された後、旅客線に転用されたものである。その資材基地だった場所に作られたのが津久井湖駅である。そして若干の下り勾配で湖岸に至り、鉄道・道路併用橋(但し併用軌道ではなく、下流側車道、上流側鉄道の専用軌道)の津久井大橋(全長220m)で湖を渡る。→城山ダム(津久井湖)建設に伴う路線付け替え 図 へ。 道路は橋を渡るとすぐに登り勾配に差し掛かるが、電車はそれよりも湖側を緩い勾配で登り、太井駅に着く。 旧線時代は急勾配と急カーブの連続する難所であったが、湖の完成と共に直線主体の路線になりスピードも大幅にアップした。なお当駅の位置は路線変更時にずらされており、合流するのは津久井中野よりに300m程進んだところである。また、旧駅をはじめとするこの付近の旧線跡は宅地等に転用され、痕跡を留めていない。 このあたりも住宅が立ち並ぶようになり、昔の田舎電車の面影は徐々に薄れつつある。 国道413号線と踏切交差すると、左手から急勾配で半原線が合流する。そして、すぐに津久井中野で、津久井町の中心地に所在する。分岐駅でありながら構内は1面2線と簡素である。 路線は中野の町を更に西に進み西中野、そして又野隧道を抜けると直ぐに左にカーブして終点の三ヶ木である。駅前にはバス部門の八王子営業所三ヶ木支所があり、相模湖・宮ヶ瀬・月夜野方面への各路線が電車に合わせて発着している。 なお、この先、横浜市水道局の青山沈殿池、および旧相模川水電三ヶ木発電所への引込線があったが今は失われている。 ・半原線 当線は戦後の開業であるが、その構想は戦前に既にあった。半原は撚糸の生産地ということで、織物を扱う八王子との結びつきがあった。このため、愛甲鉄道は当線を建設し南津電鉄と連携輸送を行うことを目的としていた。土地買収も行なわれていたが、2箇所の隧道並びに4箇所の橋梁の建設費が問題になり、また絹糸の価格暴落、半原合同自動車のバス路線開業(1927年 八王子〜相原〜小倉橋〜半原 1933年、南津電気鉄道が買収)もあり、着工は戦後に持ち越された。が、今度は朝鮮戦争による物価高騰が発生、難産の末、1955年に漸く開業したのである。 八王子から来た列車は津久井中野で進行方向を代える。 駅を出ると津久井線と暫く平走するが、こちらは33‰上り勾配なのでみるみるうちに高低差がついて行く。眼下には津久井湖が一望できるようになるが、直に根小屋隧道に入る。これを抜けると根小屋、尻久保沢橋梁の上に設けられた谷間の片面ホームの小駅であるが、大手私鉄会社が造成した住宅地「津久井レイクタウン」の利用者も多い。 根小屋を出るとちょっとした高原状の場所をすすむ。しかし、こんな所まで工場が進出しているのには正直驚かされる。 若干勾配を下ると長竹で串川沿いの集落より一段高い場所に駅がある。そしてここでまた進行方向を変える。 そして隧道を抜けると眼下に半原の町が広がる。列車はそこに向かって半ループを描く線路を降りて行く。中津川第3橋梁を渡りさらに坂を下ると右にカーブを切り半原に着く。ただし列車は全て、愛甲線の田代まで直通している。 |